エッセイ

祖父からの贈り物 ~生まれて初めてお金を使った時の話~

投稿日:2016年8月28日 更新日:

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祖父について

僕の父は、まるで秋田の鬼・なまはげの様に怖い存在であったが、それ以上に彼の父ーーーつまり僕の祖父は厳格な男として有名であった。

聞くに殴る蹴る怒鳴るは序の口で、しまいには息子を木に吊るし、竹刀で一晩中手厚い教育を施していたそうだ。

こんなこと今なら虐待として社会問題になるだろうが、今から40年以上前の田舎の家庭ではそれが割りと普通に行われていたというのだから何とも恐ろしい話である。

また、50過ぎた祖父は、10代後半の僕の父(身長180cmを超え、地元の高校で1番腕っ節が強かった)と互角の殴り合いが出来たというのだから、昔の人が持つ化物みたいな体力には改めて驚かされる。

鬼

そんな鬼も避けて通る様な男も孫が出来て大分甘々になったと見える。

僕の記憶に残る祖父は、全然怒鳴らず、いつもニコニコおり、孫達のために木のブランコを作ったり、飼っている猫を可愛がっている好々爺であった。

ある日、僕が父の実家のふすまに穴を開けるイタズラをして、父さんにボコボコに殴られた時には、

「そんなに叱らなくてもいいじゃないか」

と、祖父は身を挺して僕を庇ってくれた。

もっとも、その姿を見て父さんが

「昔の親父のほうがもっと厳しかったやろ・・・」

と、唖然とした表情で呟いたのは今でもホームビデオの一コマの様に僕の脳裏に焼き付いている。

今回の話は、そんな祖父が取った一つの行動から始まる。

猫の貯金箱

長崎県壱岐市にある父の実家の居間には古びた木製のテレビ台が置いてあり、そこにはプラスチック製でトマトのように真っ赤な猫の貯金箱が静かに座っていた。

中には総額500円程度の小銭が入っており、左右上下に人造の猫を揺らすと「じゃらじゃら、じゃらじゃら」と金属製の鳴き声を発してくれた。

今でこそ、1000円くらい躊躇なく使えるようになった僕ではあるが、お小遣いも貰えない幼稚園児だった当時は、10円玉でさえも高額なモノであったのを覚えている。

そんな僕だからこそ、この少額しか入ってないショボい貯金箱はとても貴重で、かけがえのない、かつ手の届かない大切な宝物であった。

ジバニャンの貯金箱出典:PR TIMES

セミがミンミンと煩いある日の夕刻前、父と母が夕食の食材を買いに街のスーパーまで買い物に行くことになった。

幼い僕も両親から一緒に着いて行く様に言われたが、その時は自分は不機嫌だったのか

「お父さんとお母さんが買い物するなら、僕も何か買いたい~」

と、両親に対し駄々をこね出した。

なんでこんな事を言い出したのかは流石に20年以上も前のことなので覚えていない。

僕が記憶しているのは、その時あくまでも買い物に同伴することがたまらなく嫌だったってことだけである。

当時から不平等が嫌いだったので、買い物に行くメンバーで自分だけがお金を持てないことが我慢できなかったのかもしれない。

「そんなにギャアギャア言うなら、もうどこにも遊びに連れて行かんからな!」

と、僕のワガママに耐え兼ねた父が一喝するも、どうにも僕には納得は出来ない。

しまいには僕はぐずりだしたので、父も見かねて家に置いていこうとしたその時であった。

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生まれて初めての買い物

 

「隆治や、これでジュースでも飲みなさい」

 

祖父がそう言った後、テレビ台の貯金箱を手に取り、底についてたビニール製の白い円形の蓋を外し、四角いテーブルの上に小銭をばら撒いた。

そこから、10円玉1枚と100円玉1枚ーーー当時の一般的な自動販売機の缶ジュース代であった110円を摘み、僕の小さい手のひらに優しくのせた。

「これで隆治も買い物出来るね。」

祖父は僕の手を握り、地蔵菩薩のように優しく微笑んだ。

「お義父さん、それは頂けませんよ。」

と、母は祖父に対し僕への金銭の授与を断ろうとしたが、彼は自分の意見を曲げず、結局僕はその110円という大金を手にすることが出来た。

お金の画像

相変わらずミンミンとセミが鳴く夕暮れ、買い物の帰りに寄った坂道の途中に建つ自動販売機にて、僕は人生で初めて自分のための買い物を実行した。

「ガタン・・・ゴトン!」

取り出し口から出てきたのは缶の三ツ矢サイダー。僕は、暮れゆく田舎の景色を車窓から眺めながら、それを車内で飲んだ。

喉の渇きの潤した満足感と身に余る大金を使った快感を覚えながら・・・

終わりに

ビル・ゲイツ出典:Wikipedia

自身の総資産が9兆円を超えたマイクロソフト社の創業者「ビル・ゲイツ」氏は、10ドルもしないマクドナルドのハンバーガーを購入する時さえ、しっかりとクーポンを使うそうだ。

きっと、60歳になった現在でもビル・ゲイツは子どもの心を忘れていないのだろう。

あの1ドルさえも大切だったあの幼い日々のことを・・・

by.日高 隆治

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