長男以外の人間は、結婚もできず、世間との交流すら許されない。
死ぬまで、家のため、奴隷のようにこきつかわれる……
これは、遠い外国のお話ではなく、かつて長野県に実在した「おじろく・おばさ」と呼ばれる奇習であります。
過酷な環境というものは人間性を劇的に変えてしまうらしく、おじろく・おばさは言いつけられたこと以外の行動は出来ず、まるでロボットのような無感動な性格へと変わり果ててしまいました。
今回の記事では、この人権を完全スルーした恐ろしい因習について考えていきたいかと思います。
では、どうぞ!
おじろく・おばさとは?
おじろく・おばさとは、長野県の南端に位置する神原村(現下伊那郡天龍村神原)に、16~17世紀ごろから何百年も存在した制度です。
あの日本三大酷道の1つ「国道418号線」が通過する村と言えば、マニアの方にはその過酷さがわかるかと思われます。
平地といえるような土地はほとんどなく、耕地面積が少ないこの村では、家長となる長男より下の子供を養う余裕がありません。
そこで、人減らしをするべくこの村の人々はこの奇妙な人口制限法を考えたついたのでした。
出典:NAVER まとめ
まず、一家のうち長男だけが家督を相続し、結婚して社会生活を営みます。
それ以外の子どもは、男はおじろく、女はおばさと呼ばれ、長男のために死ぬまで無償で働かされます。
彼らは、他家に養子になったり嫁いだりしないかぎり結婚を許されず、村人と一切交際せず、数少ない娯楽である村祭りにも参加することは出来ませんでした。
そのほとんどが性の喜びを知らないまま、つまり一生童貞や処女であったと推測されています。
もちろん、現在の神原ではこんな非人道的な風習は無いですが、明治5年には人口2000人の村に190人。
昭和40年代(1965~1974年)の時点で、3人の「おじろく・おばさ」が生きていたそうです。
過酷な日々が人をロボット化させる。
おじろく・おばさは、家族のためによく働いて、不平も言わなかったといいます。
ただ、過酷な奴隷としての生活は彼らの精神を確実に蝕んでいきました。
まず、他人が話しかけても挨拶すら出来ず、いつも無表情で怒ることも笑うこともありません。
将来の夢どころか趣味すらも持たず、ただただ家の仕事をして一生を終えるのでした。
意外な事に、掟に反抗して村を出ようと思う者はほとんど居なかったそうです。
ごくまれに出る者があっても人付き合いが上手く出来ず、結局はすぐに戻ってきたようです。
おじろく・おばさへのインタビュー
『精神医学』1964年6月号には、現存していた男2人、女1人のおじろく・おばさを取材し、彼らの精神状態を診断したレポートが掲載されました。
普段の彼らにいくら話しかけても無視されるため、催眠鎮静剤であるアミタールを投与して面接を行ったそうです。
すると固く無表情だった顔が徐々に柔らかくなり、ぽつりぽつりと質問に答えるようになったのだとか。
以下、レポート中にある「おばさ」へのインタビューより抜粋したもの
「人に会うのは嫌だ、話しかけられるのも嫌だ、私はばかだから」
「姉が死んでも別に悲しくもなかったが、死にかかった顔は痩せて気持ちが悪かった。」
「近所へ遊びに行ったのは子供のときだけで、あとは暇もなかったし用事もなかった。遊びに行きたいとも思わなかった。」
「自分の家が一番よい、よそへ行っても何もできない、働いてばかりいてばからしいとは思わないし不平もない」
続いては、村の古老数人の話から。
数人のおじろくを知っていたが、結婚もせず一生家族のために働いて不平もなかった。
子供のころは普通であったが20才過ぎから無愛想な人間になり、その家に用事で行くと奥へ隠れてしまうものもあり、挨拶しても勝手に仕事をしているものもあり、話しかけても返事もしなかった。
おじろく同士で交際することもなかった。時におじろくがおばさの所へ夜這いにいったなどという話もあったが、こういうことは稀であった。
恐らく多くの者は童貞、処女で一生を送った。怠け者はなくよく働いた。
ここで興味深いことは、子どもの頃は普通であったという部分ですね。
つまり、非社交的な性格は醜悪な環境によってもたらされた後天的なものであることが読み取れます。
過労死社会とおじろく
上にも書いたとおり、この現代社会には「おじろく・おばさ」の風習は存在しません。
が、これらの出来事が私たちに無関係かと言えば、そうではありません。
うつ病や過労死、ひきこもりによるコミュニケーション障害など、現代の社会問題に通じる部分もあるのではないでしょうか?
第三者目線で絶句する様なブラック企業で働く労働者らが退職しないのも、疎外された社内環境のせいで人格が変化しまった可能性が大いにあります。
さて、最後までこの記事を読んでくださった皆様。
あなた方は、現代の「おじろく・おばさ」になっていませんか?
by.ひだりゅー
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