エッセイ

【心霊現象】真夏の夜の悪夢【金縛り体験】

投稿日:2016年8月7日 更新日:

われら役者は 影法師、

皆様がたの お目がもしお気に召さずば 

ただ夢を見たと思って お許しを。

ーーーウィリアム・シェイクスピア『真夏の夜の夢』より

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序文

「俺は神の存在を感じることが出来るんだ」

今から10年以上も前、福岡県のとある公園で僕の親友は声高々に語った。

茹だるように暑い夏休み中の夕暮れ。

付近はセミとドッチボールや鬼ごっこをする小学生児童らの声で溢れかえっていた。

親友は彼らに負けじと大声で口上を続ける。

 

「神はとてつもなくデカイ。そして、そいつの身体は真っ黒なんだ。」

 

ここまで言うと、一度彼は神を自分の身に取り込むかの様な深呼吸を何度か行った後、また喋り出す。

「炭よりも夜の海よりも暗い黒だ。頭には王冠をしている。顔があるけど目はない。口があるべき場所に肌よりももっと真っ黒な穴が広がっているだけなんだ。」

「ふ~ん」

高校生の僕は頷きながら

「こいつ、熱中症で馬鹿な頭がもっとダメになっちまったか?」

と、彼を本気で心配した。

それぐらいその日は暑かったし、友達のトークもオーバーヒートしていた。

 

 

そして、現在。

僕は未だにその巨大な神の姿を感じたことは一度も無い。

おそらく今後も感得することは出来ないだろう。

もっとも、その代わりに別の真っ黒なものが僕の前に現れることになるのだが・・・

悪夢到来

親友の話から3年後、僕は広島県呉市で海上自衛官として働いていた。

当時、僕は自衛隊の同期と2人でルームシェアをして暮らしていた。

同期には彼女が居た。名前をRという。

Rは、僕らと同い年でよく僕らの家に泊まりにも来ていた。

彼女は気立てが良い娘で、すぐに僕とも打ち解け、よく三人でご飯を食べたりもしたものであった。

とまあ、僕はこんな感じに楽しい日々を過ごしていた。

 

 

舞台はある蒸し暑い夏の夜へと移る。

出港から戻ってきてかなりヘトヘトだった僕は、家に帰り着くなり自分の部屋の布団に真っ先に潜り込んだ。

そのまま泥のようにうつろうつろになりながら、まるで赤子の様に眠りについた。

 

 

真夜中、気がつけば意識が覚醒していたのを覚えている。

どこからが始まりなのかがわからない。混濁している・・・頭が。

身体を動かそうにも指一本すら動かなかった。

そう・・・この時僕は生まれて初めて「金縛り」を体験していたのであった。

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不思議と恐怖は感じなかった。

かと言って興奮もしなかった。

それは風の当たらない湖の水面のようにとても静かな感情であった。

後にも先にもこんな気分になったのはこの時限りである。

 

 

気がついたら、Rが僕の枕元に正座していた。

顔は動かせないので、僕は彼女を直接見ることは出来ない。

だが、そこにRが居ることだけは何故か感じ取ることが出来た。

まるで幽体離脱しているかの如く、意識だけは自分を俯瞰している感覚を覚えた。

「R・・・助けてくれ・・・」

声を出そうと思ったが、口を動かせない僕は言葉にならない「ひゅーひゅー」という音を発しただけだった。

そして、Rはずっと無言で微動だにしない。

そんな状態で5分ほど過ぎた時、僕は異変に気がつく。

 

「Rの他にもう一人、黒い小人が俺の枕元にいるぞ・・・」

 

Rの右側にもう一人誰か座っているのだ。

当然、僕はR同様にその存在を視認することは出来ない。

ただ感じるだけだった。黒い小人が僕の近くに居ることを・・・

その小さい何かは僕を見下ろしながら、口をパクパクさせていたように思えた。

でも、残念ながら僕にはそよ風の囁きみたいな訴えを理解することは叶わなかった。

RはRで、相変わらず打ち捨てられた廃墟の様な沈黙を守っている。

そんな状態がしばらく続いた後、僕はまた意識を失う。

 

 

気がついたら、朝5時になっていた。

結局、彼女らは僕に対し何もしてこなかった。

ただ、金縛り状態である僕の枕元に2人して座っていただけだ。

目覚めてから、寝ぼけた頭を整理する為にぼーっとしていると、僕は一つの事実に思い当たった。

この日、同居人は用事で家に居ないこと。

彼の彼女であるRも僕らの下宿には来ていなかったことに・・・

 

つまり、この家には最初から僕一人しか居なかったのだ。

 

事件の真相

それから1ヶ月後のある日のこと。

僕は例の金縛りをすっかり忘れ、僕は歳相応の退廃的な不満を感じつつも特に不自由なく過ごしていた。

仕事帰りに、居酒屋で同期と酒を飲んでいた時にふと彼が告白した事実を聞くまでは・・・

 

「実はR、一ヶ月前に子どもを堕ろしたんだ・・・」

 

聞くと同期とRの間に赤ちゃんが出来ていたそうだが、お互い若く生活的余裕も無かったこと、そしてRが学生だったということもあって、二人の間に出来た子どもを堕胎したそうだ。

そして、その中絶手術を行った日の夜・・・僕は、自室で金縛りにあったのであった。

それはたまたま偶然で重なっただけなのだろうか?

いや、本当は子どもを産みたかったR、そしてこの世に生まれたかった彼女らの子どもの強い念が僕に訴えかけてきたのだろうか・・・?

今となってはその事実を確かめる術はない。

by.日高 隆治

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